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トピックス(整形外科)

2023.01.30

中高年の膝の痛み: 変形性ひざ関節症

当医療センターでは病院の背景上、中高年齢者の変形性関節症の患者さんが、外来の大半を占めることになります。
変形性膝関節症は加齢に伴い,ひざの上の骨(大腿骨)と下の骨(脛骨)と前側の骨(膝蓋骨:お皿の骨)がこすれ合う表面を覆う軟骨が徐々にすり減ってくるために起こる病気です。 進行すると関節表面は滑らかでなく、ザラザラ、ゴツゴツとなり動かすと互いに摩擦が生じることで炎症が生じて膝関節症となります。
当初は膝周囲の違和感,張りから始まりその後膝が腫れる,水がたまる,歩行時に痛みが出るなどの症状が出現します。変形性膝関節症が進行すると次第にO脚が進み、階段のみならず平地歩行でも支障をきたすようになり日常生活で支障をきたすようになります。
診断は理学所見(診察)や画像所見(レントゲン、MRI)および血液検査、骨密度など多角的視点から評価し、個々の患者に最も適切な治療を提供したいと考えております。

<保存療法:手術以外の治療、再生医療を含む>

①下肢運動療法

ベッドで仰向け,または椅子に座った状態で穏やかに脚を短時間持続的に上げ、下ろすだけの簡単な運動です。毎日2回(朝、夕)行い約1カ月半から効果が出現します。
この効果は湿布処置や膝注射のみ行っている患者と比べ、同等かそれ以上であることが証明されております。当科では外来で直接指導し絵付きのパンフレットを手渡しております。

②ヒアルロン酸関節注射

月1回で3-5回行い,一定の効果がみられます。

③PRP注射

従来の保存治療で効果が少ないが,現段階で手術までは考えていない,もしくは手術が必要なほどは膝の変形が進行していない患者さんに対して適応があります。詳しくは,“変形性膝関節症に対するPRP(多血小板血漿)療法による再生医療のご案内“の方をご覧ください。

<手術による治療>

保存治療で多くの患者さんの症状は概ね改善されますが, 上記の治療効果が少なく症状が増悪する場合には、膝周囲骨切り術や人工膝関節置換術を行っております。

①骨切り術

自分の関節は温存しつつ膝周囲の骨を切ることでO脚やX脚を矯正する治療です。活動性の高い50-60歳の患者さんが対象になります。利点はひざ関節の動き(可動域)が術後も制限されないこと。つまりしゃがみ込み動作や正座可能な動きが維持できることです。

②人工膝関節置換術

すり減った軟骨の表面を整え、金属性とポリエチレンの形にしたもので置き換えます。

入院は約2週半程度です。術前評価(採血、心電図)を行い麻酔する上で大きな問題がないと判断した場合は90歳以上の患者でも行うことが可能です。

膝脛骨骨切り術(術前・術後)
人工膝関節片側置換術
人工膝関節全置換術

“ひざ”の痛みがある方は、整形外科外来(水-木曜)を受診してください。 
問い合わせは ⇒ 医事課 予約係 TEL:03-5857-5111 までお願いします。
受付:平日9:00-17:00 土曜日 9:00-12:00

脊椎外科とは

背骨(脊椎)に由来する疾患を専門に診療する分野で、整形外科の中で脊椎疾患の占める割合は多くなっています。さらに脊椎疾患のなかでも、腰痛疾患は運動器疾患の中ではきわめて多く、日本における有訴者率の男性では第1位、女性の第2位が腰痛であり、腰痛症が、疾患名でなく病態を表しているため、はっきりとした定義がないことから腰痛の原因は幅が広く、”明らかな原因のない腰痛”が存在し、画像上の所見と一致しないものや下肢症状のない腰痛では、80~90%は診断がつかないと言われています。腰痛の原因には、変性、感染、炎症、腫瘍によるものや脊椎以外の血管系や消化器系、婦人科系の臓器に由来することや精神的要素から生じることもあります。
脊椎の構造は、頸椎・胸椎・腰椎・仙椎が、椎間板・椎間関節・靭帯によって連結していて、体の中でもきわめて繊細な部位です。体幹を支える役割はもちろん、脊柱管内の脊髄・神経の保護等も担っているため、治療において、身体への負担を軽減することは非常に有用な方法と考えています。
当医療センター整形外科では、内視鏡を用いた脊椎手術に対応できる全国でも数少ない医療機関です。我々は、適切な知識と技術をもって、従来の脊椎手術における侵襲(体への負担)が大きいこと、成績不良例が散見されることに対して、的確に病態や病期を診断することはもちろんのこと、以下の点を考慮して手術を行っています。

近年の脊椎外科手技や手術器具の進歩により、低侵襲化が可能になってきています。我々は合併症や術後疼痛の軽減、早い復帰、そして何よりも安全な手術を目指して低侵襲化を図り、前方・側方進入手術、顕微鏡下手術、内視鏡下手術、低侵襲脊椎安定術(MISt)など最先端の手術を積極的に行っています。
手術によりどの程度症状の改善が期待できるのか、手術による合併症、後遺症をいかに低減するかを念頭に取り組んでいますのでお気軽にご相談ください。

脊髄モニタリングMEPとは

脊髄モニタリングとは、脊椎脊髄手術における神経合併症を避けるために行われる脊髄電位の測定のことで、術中の神経モニタリングを適切に判断して、術中から早期に異常を発見することが可能で、術式の追加や変更、術後管理の修正を行い、神経機能の温存につなげます。脊髄モニタリングには、深い知識・経験・見識を有していることが必要で、当医療センターには、適切な波形判断と安全管理を行う「脊髄モニタリング認定医」が所属しています。術式により脊髄モニタリングを併用して手術加療を行います。

順天堂江東高齢者医療センターの使命として、高度な医療を、より高齢の患者さんに提供することで健康寿命の増進に寄与したいと考えます。
当科の脊椎外科は、

が在籍しています。この資格を持つ整形外科医は、全国でも限られた人数しかおりません。
脊椎や脊髄の病気でお困りの方は、是非私たちにご相談ください。

具体的には、以下の脊椎疾患に対する診療を行っています。

  1. 腰椎・頚椎椎間板ヘルニア
  2. 腰部脊柱管狭窄症
  3. 腰椎分離症、すべり症
  4. 脊柱変形(側弯症、後弯症)
  5. 頚椎後縦靱帯骨化症・頚髄症
  6. 骨粗鬆症
  7. 変形性脊椎症
  8. 脊椎圧迫骨折

脊椎の疾患とは

腰椎椎間板ヘルニア

ヘルニアの症状とはおしりから太ももの裏や外側、すねの裏や外側に痛みやしびれが来ることで発症します。足の筋力の低下や排尿、排便障害となることもあります。必ずでは、ありませんが、若年者は仰向けの状態で膝を伸ばしたままで、足を70°以上上げることができない場合は、ヘルニアを強く疑います。
また、痛み止めを内服して1ヶ月以上経過する場合は病院を受診しましょう。
排尿、排便障害、おしりの周りのしびれや灼熱感のある場合は緊急を要しますので、直ぐに最寄りの医療機関(可能であれば脊椎を専門としている医療機関)を受診してください。

診断:神経学的所見とMRIの画像診断、
基本は保存加療です。
保存治療しては、安静、鎮痛薬の服用 ブロック注射を行います

仙骨裂孔ブロック 尾てい骨の上から脊柱管内に痛み止めを注入して馬尾神経全体に作用させます。
硬膜外ブロック ヘルニアが出ている椎間レベルに痛み止めを脊柱管に投与してブロックします。
神経根ブロック 問題のあるもしくは疑わしい神経に直接針を当てて、より選択的に痛みをブロックします。治療としての側面もありますが、同時に診断もしています。

腰部脊柱管狭窄症

  • 長距離が歩けない、
  • 友人と同じスピード歩けない
  • 自転車は問題ない
  • カートを押していると楽

これらは腰部脊柱管狭窄症の可能性があります

特に、

  • 100m以上連続で歩けない
  • 会陰部(股やおしりの周り)の灼熱感
  • 便秘気味、尿もれ、頻尿があるなどの症状

これらは早期の手術の適応になります。
早期の脊椎専門病院の受診を勧めます。

保存治療が第一選択ですが、一度狭窄したところが拡大することはありません。リハビリ等で現状維持は可能かもしれませんが、手術を念頭に置いて治療をすることを進めます。

診断:神経学的所見とMRI撮影

保存治療
体幹筋力トレーニング
コアマッスルの筋力アップ
ストレッチ
ブロック治療についてはヘルニアと同様です

手術加療について

頚椎症性神経根症 頚椎椎間板ヘルニア

頚椎の変性や椎間板ヘルニアにより、神経根(末梢神経)が圧迫される病態です。
急性期の場合、保存治療をしてから4ヶ月で改善を認めることが多いため、まずは保存治療が原則です。
内服やブロック治療を行い、半年から1年の経過である場合は手術治療を検討します。

手術加療について

頚椎症性脊髄症

手のしびれ、箸が使い辛い、ボタンが掛け辛い、転びやすい、ふらつく、排尿、排便障害 (脊髄症状)が特徴的な症状で頚椎の神経の通り道が狭くなる事により脊髄が圧迫を受ける病態です。
脊髄症状がでている場合は、準緊急の手術加療をおこないます。
基本的には保存加療は効果がありません。

手術加療について

手根管症候群

手のひらの神経のトンネル(手根管)の中の圧が高まることにより、中を通る正中神経が圧迫を受けることになり、母指(親指)から環指の母指側半分、合計3本半の指がしびれるようになります(正中神経の支配領域)。さらに親指の付け根の筋肉が徐々にやせて、ものがつかみにくくなり、ものを落としたり、ボタンが書けづらいといった症状がでます。患者さんの中には前腕や肘、肩の痛みや重だるさを訴える方もおり、頚椎症に似た症状であり、注意が必要です。

手術加療について

十分な保存治療に抵抗性の場合は手術加療勧めます

腰痛に対する患者立脚型評価法を使用した治療成績の検討の研究について

当医療センター整形外科では高齢者の腰痛や腰椎疾患へのさらなる低侵襲治療の発展のため、腰椎の保存治療、手術治療を受けられる方へアンケートでの調査を行っています。
この研究調査については、患者さんへの新たな負担はありませんが、アンケートの記入をお願いいたします。
本研究は個人のプライバシーに配慮して研究調査を行います。本研究についての参加やデータの利用を望まない場合には、担当医に申し出ください。

腰痛に対する患者立脚型評価法を使用した治療成績の検討