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特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう)

2023.01.30

【特発性正常圧水頭症とは】

脳の中や脊髄の表面を流れる髄液(ずいえき)と呼ばれる水が、脳の中心にある脳室(のうしつ)と呼ばれる場所に過剰にたまって周りの脳を圧迫することにより、歩きにくさ・物忘れ・尿失禁などが起こる、高齢者特有の病気です。
65歳以上の方の50人に1人以上に起こるといわれており、けっして珍しい病気ではありません。
大切なのは、これらの症状は手術により治すことができるということです。

特発性正常圧水頭症(MRI画像)

【特発性正常圧水頭症の症状は?】

①歩きにくさ
不安定で、歩幅は小刻みで足を大股に開くような歩き方が特徴です。
初期には、バランスが悪くなってふらつくようになったり、歩くのが遅くなったということで気づかれることもあります。

②物忘れ
初期には軽い物忘れから始まり、徐々に認知症の症状に進行し、時間や場所が分からなくなることがあります。
また、表情や反応が鈍くなったり、気分の落ち込みがでることもあります。

特発性正常圧水頭症(②物忘れ)

③尿失禁
トイレに間に合わず失禁してしまうことがあります。
初期には短い時間に何度もトイレに行きたくなる頻尿(ひんにょう)の症状だけのこともあります。

【特発性正常圧水頭症の検査は?】

特発性正常圧水頭症を診断するには、まずMRIやCT検査を行い、脳室に髄液がたまっているかを確認します。髄液がたまっていて特発性正常圧水頭症が疑われた場合は、腰から注射針を刺して、髄液を約30mlほど抜くタップテストという検査を行います。この検査は病室で30分ほどで行う処置で、局所麻酔も使うので痛みも少なく行えます。
タップテストで髄液を抜いたことで症状が改善されれば、特発性正常圧水頭症と診断します。当院では、患者様の状態に合わせて3日~1週間程度の短期入院をしていただき、症状の改善をチェックするタップテスト入院を随時受け付けています。お気軽にご相談ください。

【特発性正常圧水頭症の治療は?】

特発性正常圧水頭症は、手術で症状の改善が期待できます。脳にたまった髄液を、皮膚に埋め込んだ細いチューブを通して腹部に流す「髄液シャント術」という手術を行います。
方法は以下の通り3つありますが、当医療センターでは脳を傷つけない方法として3. 腰椎-腹腔シャント術が多く行われています。 手術は腰に針を刺し脊柱管内と腹腔内をチューブで繋ぎ、余分な髄液を背中からお腹の中に逃がす方法で、その有効性は多くの研究で実証されています。
早期に治療を受けることで、症状を改善したり、症状の進行をおさえることが可能で、ご高齢の患者さんでも比較的軽い侵襲で行えます。

(左から)
1.脳室ー腹腔シャント術
2.脳室ー心房シャント術
3.腰椎ー腹腔シャント術

この手術は全身麻酔で行い、約1~2時間で終了します。入院期間は7~10日程度で、保険適応です。髄液の流れる量を調節できる「圧可変式バルブ」や、髄液の流れ過ぎを防止する器具も患者様の状態に合わせて使いますので、手術後は外来で、髄液のたまり具合を画像で確認しながら、痛みなく調整することができます。

【いつでもご相談ください】

当医療センターは、順天堂医院(御茶ノ水)と連携して特発性性常圧水頭症の診療を長年にわたって行っており、臨床や研究の実績は国内屈指の施設です。全国の施設と連携して臨床研究なども行い常に最新の方法を患者様に合わせてご提供いたします。また、患者様とご家族がより良い生活を送ることができるよう、包括的にサポートさせて頂きます。どうぞお気軽にご相談ください。